広告バナーをAIで作る|画像生成プロンプト実例とディレクションのコツ
広告バナーの制作で画像生成AIがもっとも効くのは、背景・キービジュアルの量産 です。コピーやロゴはデザインツールで載せる前提にすれば、「素材探しに数時間」「ストックフォトがどれも既視感」という課題が一気に解消します。
ただしバナーには、通常の画像生成にはない制約があります。テキストを載せる余白、媒体ごとのサイズ、広告審査、業界レギュレーション。この記事では、これらの制約を織り込んだプロンプトの書き方を実例で解説します。
基礎の5要素フレームワーク(主題・スタイル・構図・描写・技術指定)は 画像・動画生成AIプロンプト完全ガイド を参照してください。
AIへの「デザイン指示書」は何を書けばいいか
チラシやバナーのデザインをAIに任せるとき、多くの人が「夏のセールっぽい感じで、明るく元気に」と書いて失敗します。これは人間のデザイナーが相手なら成立する指示ですが、AIには足りません。デザイナーは商材・客層・過去の制作物といった前提を共有しているのに対し、AIは書かれていることしか知らない からです。
AI向けのデザイン指示書は、次の6項目を短く埋めるのが最も確実です。
| 項目 | 書くこと | 悪い例 → 良い例 |
|---|---|---|
| 訴求 | 誰に何を伝えたいか(プロンプトの外で決める) | 「夏っぽく」→「30代女性に、涼しさと高級感」 |
| 主題 | 画面に写る物・人・風景を具体的に | 「海の感じ」→「透明感のあるターコイズの海と白い砂浜」 |
| スタイル | 参照するジャンル・技法 | 「おしゃれに」→「旅行広告のキービジュアル調、実写風」 |
| 構図 | 配置と、空けておく場所 | 指定なし →「被写体を右1/3、左2/3は余白」 |
| 描写 | 色・光・質感 | 「明るく」→「真昼の強い日差し、彩度高め、人工物なし」 |
| 技術指定 | 比率・用途・禁止事項 | 指定なし →「1:1、文字・ロゴ・人物は入れない」 |
重要なのは、訴求は指示書の外で決める ことです。「誰に何を伝えるか」が決まっていないままAIに投げても、それらしい絵が出てくるだけで、広告としては機能しません。訴求を決めてから、それを主題と描写に翻訳する——この順番が崩れると、何枚生成しても採用できる案が出ません。
もうひとつのコツは、「〜な感じ」を全部消す ことです。「高級感のある感じ」は「彩度を抑え、余白を大きく取り、光は柔らかい拡散光」に、「元気な感じ」は「高彩度の暖色、斜めの動きのある構図」に置き換えます。形容詞を、色・光・構図の言葉に翻訳する作業がプロンプト作成の実体です。
バナー用プロンプトの鉄則3つ
鉄則1: 文字はAIに描かせない
画像生成AIは日本語の文字描画がまだ苦手です。崩れた文字が1箇所でもあると広告としては使えません。プロンプトには必ず 「文字・ロゴは入れない」 を書き、コピーは後載せします。
「文字を入れない」と書いても入ってしまう場合は、否定形が効いていない可能性があります。「文字要素のない、写真だけの構図」 のように肯定形へ言い換えると通りやすくなります。
鉄則2: 余白を構図で設計する
バナーはビジュアルの上にコピー・CTAボタンが載ります。つまり 「どこを空けるか」までがプロンプトの仕事 です。
被写体を右1/3に寄せ、左2/3は単色に近い余白にする
この一行があるかないかで、生成画像の実用率が大きく変わります。
余白の指定は「空ける」だけでなく 「何で埋めるか」 まで書くと安定します。「左2/3は余白」だけだと、AIは何かを描き込もうとします。「左2/3は単色に近い空/壁/ぼかした背景」のように、平坦な面になる理由を与える のがコツです。
鉄則3: サイズはベース比率で考える
バナーは 300×250、728×90、1080×1080 など多サイズ展開が前提です。すべてを個別生成するのではなく、正方形(1:1)と横長(16:9)の2ベースを生成し、トリミングで展開する のが効率的です。極端な横長(728×90)はトリミング前提で、余白多めの構図を指定します。
| 展開先 | ベースにする比率 | 構図で注意する点 |
|---|---|---|
| 1080×1080(SNS) | 1:1 | 中央〜片側に主題、反対側に余白 |
| 1200×628(ディスプレイ) | 16:9 | 上下が切れる前提で主題を中央帯に |
| 300×250(レクタングル) | 1:1 | 主題を小さくしすぎない |
| 728×90(ビッグバナー) | 16:9 | 主題を端に寄せ、中央は平坦に |
| 1080×1350(縦型SNS) | 4:5 | 上下に余白、主題は中央より下 |
主題を画面の端ギリギリに置かない のも実務上のポイントです。トリミングで切れる可能性がある領域には、切れて困るものを置かないでください。
実例: Before / After
Before
夏のセールバナー用の背景画像。海とビーチの感じで明るく。
このプロンプトを 画像・動画プロンプト診断 にかけると、主題以外の4要素(スタイル・構図・描写・技術指定)で減点されます。
After
【主題】透明感のあるターコイズブルーの海と白い砂浜、打ち寄せる波
【スタイル】明るく彩度高めの実写風、旅行広告のキービジュアル調
【構図】水平線を上1/4に置いたワイドショット。下半分の砂浜はテキスト用の余白としてシンプルに
【描写】真昼の強い日差し、波の透明感とハイライトを強調、人工物なし
【技術指定】1:1ベース(Instagram広告用、横長にもトリミング可)、文字・ロゴ・人物は入れない
差は「情報量」ではなく 「判断をAIに委ねていないこと」 です。Beforeでは、水平線の位置・余白の場所・人物の有無を全部AIが決めます。Afterでは、広告として必要な条件を人が先に決め、AIは描画だけを担当します。
用途別プロンプト実例
1. セール・キャンペーン(緊急感)
【主題】赤とオレンジの抽象的なグラデーション背景に、勢いのある斜めの光の筋
【スタイル】モダンでエネルギッシュなデジタルアート
【構図】光の筋を左上から右下へ。中央はコピー用にフラットな面を残す
【描写】高彩度の暖色、発光感、深みのある赤のグラデーション
【技術指定】1:1、セール告知バナーの背景用、文字なし
抽象背景はブランド縛りが緩く、審査リスクも低い万能素材です。商材が写らないため、景表法・薬機法の観点でも安全側に倒せます。
2. BtoBサービス(信頼感)
【主題】ガラス張りの近代的なオフィスビルを見上げた抽象的な構図
【スタイル】クリーンでミニマルな実写風、コーポレート調
【構図】ローアングル、ビルの線が右上へ収束。左半分は空の余白
【描写】青基調、朝の澄んだ光、シャープな質感
【技術指定】16:9、BtoBサービスのディスプレイ広告用、文字・社名ロゴなし
BtoBでは「ビルと空」「握手」「都市の夜景」が既視感の三大パターンです。差別化したい場合は、顧客の業務が実際に行われている場所(工場のライン、事務所の机、現場)に寄せると、同業他社の広告と並んだときに埋もれません。
3. 美容・コスメ(質感訴求)
【主題】クリームのテクスチャーが渦を巻く抽象的なクローズアップ
【スタイル】高級コスメ広告風の実写調、マクロ撮影
【構図】画面下1/3にテクスチャー、上2/3は淡い単色の余白
【描写】柔らかい拡散光、アイボリー〜ベージュの上品な色調、みずみずしいツヤ
【技術指定】4:5、コスメ広告用、文字なし、人肌は写さない
注意: 美容・健康系は薬機法・景表法の観点で「効果を暗示するビジュアル」(使用前後の対比など)が審査NGになり得ます。ビジュアル自体の表現も校閲フローを通してください。
4. 食品・飲食(シズル感)
【主題】鉄板の上でチーズがとろけるハンバーグ、立ち上る湯気
【スタイル】食欲を刺激するシズル感重視の実写風フードフォト
【構図】斜め45度のクローズアップ、被写体を左寄せ、右側に余白
【描写】温かい照明、湯気とチーズのツヤを強調、背景は暗めにぼかす
【技術指定】1:1、フードデリバリー広告用、文字なし
食品も「実物より著しく優良に見せる」表現は景表法リスクがあります。実際の商品写真と併用する運用が安全です。
5. 不動産・住宅(生活イメージ)
【主題】朝の光が差し込むリビングの一角。ソファとローテーブル、観葉植物
【スタイル】住宅情報誌のインテリア写真風、実写調
【構図】アイレベル、右側に窓と光源。左1/3は壁の平坦な面で余白を確保
【描写】自然光のみ、彩度は控えめ、生活感のある小物を少し
【技術指定】16:9、不動産広告のキービジュアル用、文字・人物・ブランド家具は入れない
物件そのものの写真として誤認されると、実物との相違が問題になります。イメージ画像であることが分かる使い方 に留め、物件写真と混在させない配置にしてください。
6. 求人・採用(働く空気)
【主題】打ち合わせスペースで資料を広げる複数人の手元。顔は写さない
【スタイル】ドキュメンタリー写真風、飾らないトーン
【構図】俯瞰気味、テーブルの右半分を空けてコピー用の余白に
【描写】自然光、彩度控えめ、実際の職場らしい雑然さを少し残す
【技術指定】1:1、採用広告用、文字・社名・顔は写さない
採用広告は「実際の職場と違いすぎる」ことが応募後のミスマッチにつながります。イメージ画像を使うなら、過度に理想化しない 方が結果的に採用効率が上がります。
7. スクール・教育(学びの場)
【主題】ノートとテキストが開かれた机、手元にペン。人物の顔は写さない
【スタイル】清潔感のあるライフスタイル写真風
【構図】斜め上からの俯瞰、左に机上の物、右2/3はテーブル面の余白
【描写】柔らかい室内光、彩度は中程度、暖かみのある色調
【技術指定】4:5、スクール広告用、文字・書籍タイトル・ロゴは入れない
教育系は「合格」「成績向上」を暗示する表現が景表法上の論点になり得ます。成果を絵で断定しない 構図に留めるのが安全です。
8. イベント・セミナー告知
【主題】広い会場の後方から見た、登壇者と客席のシルエット
【スタイル】臨場感のある実写風、暗めのトーン
【構図】上1/3を暗い天井の余白に。人物は小さく、個人が識別できない引き
【描写】ステージ照明のみ、コントラスト強め、寒色寄り
【技術指定】16:9、セミナー告知バナー用、文字・スクリーン内容・顔は写さない
A/Bテスト用バリエーションの作り方
バリエーションを闇雲に量産しても、何が効いたのか分かりません。5要素のうち1つだけを変える のが原則です。
| 変える要素 | バリエーション例 | 検証できること |
|---|---|---|
| 描写(時間帯) | 朝の光/夕方の光 | 明るさの印象がCTRに効くか |
| 描写(色調) | 暖色寄り/寒色寄り | ブランド色と訴求のどちらを優先すべきか |
| 主題(人の有無) | 人物あり/物のみ | 共感訴求と商品訴求のどちらが効くか |
| 構図(余白位置) | 左余白/右余白 | コピーの配置がクリックに効くか |
| スタイル | 実写風/イラスト調 | 表現形式そのものの適合性 |
複数を同時に変えると、差が出ても原因が特定できません。1回のテストで1要素 を守ると、知見が蓄積されていきます。
なお、生成画像の当たり外れもあるため、同じプロンプトから複数枚出してその中の1枚をテストに使う場合、比較しているのはプロンプトではなく画像個体です。プロンプトの検証をしたいなら、各条件で同じ枚数を出し、選定基準を揃えてから比べてください。
紙のチラシとWebバナーの違い
同じ「デザイン指示書」でも、出力先が紙かWebかで注意点が変わります。
| 観点 | Webバナー | 紙のチラシ |
|---|---|---|
| 文字量 | 少ない(1〜2行) | 多い(見出し+本文+詳細) |
| 余白の必要量 | 画面の1/3程度 | 半分以上を空けることも |
| 見られ方 | 小さく、一瞬 | 手に取って、近くで |
| 破綻の許容度 | 比較的高い | 低い(拡大して見られる) |
| 解像度 | 表示サイズ相当 | 印刷解像度が必要 |
チラシで特に効くのは、背景を「模様の弱いもの」にする ことです。情報量の多い背景の上に文字を置くと読めません。グラデーション、単色に近い風景、質感だけの抽象背景が扱いやすい素材です。
また、印刷物は生成画像の解像度が足りないことがあります。生成後に拡大処理をかける前提 で、初めから大きめの比率で出しておく運用が安全です。
ブランドトーンをチームで固定する
バナーを継続的に量産すると「担当者によってトーンがバラバラ」問題が起きます。解決策は、スタイルと描写の指定を定型文としてテンプレート化する ことです。
(ブランド共通指定 — 全バナープロンプトの末尾に付ける)
【スタイル共通】ミニマルで余白の多い構成、装飾を排したクリーンなトーン
【描写共通】コーポレートカラーの青を基調、彩度は中程度、光は柔らかく
【技術共通】文字・ロゴ・実在ブランド・特定人物は入れない
この定型文を社内の共有ドキュメントに置き、バナー制作時は必ずコピペで使う運用にすれば、ブランドガイドラインがそのまま生成AIのディレクションになります。色はカラーコードで指定しても厳密には再現されないため、「濃い青と水色の2階調」のように色の関係で書く 方が意図通りになります。
同じ内容を動画で見る(Fitsel AI の無料AI講座) →
制作フロー(5ステップ)
- 訴求を決める:誰に何を伝えるか。ここはAIの外の仕事
- 訴求を6項目に翻訳する:主題・スタイル・構図・描写・技術指定に落とす
- ベース比率で生成する:1:1と16:9を各数枚。1枚目を採用しない
- 選定する:破綻がない/余白が確保されている/トーンが揃っているで絞る
- コピーとロゴを載せて入稿:デザインツールで後載せし、審査規定を確認
このうち、時間がかかるのは1と4です。2〜3はAIが速いので、1と4に時間を回す のが正しい配分になります。
入稿・審査で落ちる典型パターン
- 崩れた文字やロゴらしきものが写り込んでいる:等倍以上で全体を目視確認する
- 実在ブランド・人物・キャラクターに似ている:特に商品パッケージや車、建物の看板に注意
- 効果効能を暗示する対比表現:使用前後、体型の変化、症状の改善を思わせる構図
- 実物より著しく優良に見える:食品の量・大きさ、住宅の広さ、加工感の強い商品写真
- 入稿規定を満たしていない:ファイル形式、容量、テキスト占有率の上限
- 手指の破綻:人物を入れた場合の最頻出。手元を写さない構図で回避できる
審査に落ちると再入稿の手間だけでなく、配信の機会損失が発生します。生成段階でリスクのある要素を入れない 設計にしておくのが、結局いちばん速い方法です。
よくある失敗
訴求を決めずに生成を始めている
「とりあえず何枚か出してみて、良さそうなのを選ぶ」は最も時間を溶かすパターンです。訴求が決まっていないと、選定の基準も存在しません。
余白の指定を忘れている
生成画像の実用率が最も下がる原因です。コピーを置く場所がないビジュアルは、どれだけ綺麗でもバナーとして使えません。
1枚目をそのまま入稿している
生成結果には当たり外れがあります。破綻チェックを通したものだけを候補に残してください。特に手指と文字は等倍以上で確認します。
ブランド指定を毎回書き直している
言い回しが少しずつ変わると、トーンが揺れます。定型文を保存し、コピペで使ってください。
運用チェックリスト
- 訴求(誰に何を)が先に決まっているか
- 「文字・ロゴを入れない」を毎回指定したか
- コピー・CTA用の余白を構図で指定したか
- 商用利用可のツール・プランで生成したか
- 実在人物・ブランド・キャラクターに似た要素がないか目視確認したか
- 手指・細部の破綻を等倍以上で確認したか
- 業界レギュレーション(薬機法・景表法等)の校閲を通したか
- 媒体の入稿規定(ファイル形式・容量・テキスト占有率)に合わせて書き出したか
まとめ
- バナー制作でAIに任せるのは 文字なしの背景・キービジュアル。コピーは後載せ
- デザイン指示書は 訴求・主題・スタイル・構図・描写・技術指定 の6項目に落とす
- 「〜な感じ」は全部、色・光・構図の言葉に翻訳 する
- 余白の設計までがプロンプト。「どこを空けるか」と「何で埋めるか」を書く
- サイズは1:1と16:9の2ベースを作り、トリミングで展開する
- A/Bテストは 1回に1要素だけ 変える
- ブランドトーンは定型文化して共有すると、担当者が変わっても出力が揃う
プロンプトの完成度は 画像・動画プロンプト診断 で確認できます。登録不要・無料 で、5軸スコアと、Midjourney等にそのまま貼れる英語版付きの改善プロンプトが30秒で返ります。
この記事の指示書の型は 広告バナーの背景画像テンプレート にしてあります。訴求・掲載媒体・空けたい余白を埋めるだけで、テキスト余白の設計まで入ったプロンプトが出ます。画像プロンプトのテンプレート集 には他の用途の雛形もあります。